サラリーマンの野崎陽一郎は、人柄が良いせいか営業成績も優れている。しかし、思わぬきっかけで彼の人生は一時停止してしまう。動脈瘤のため倒れてしまった彼は、医者から一刻も早い手術が必要と告げられるが、手術結果には保障がなく、たとえ成功してもこれまでの記憶を全て失う可能性があるという。彼は会社を辞め、手術同意書も放置したまま、悔しさを抱きながら日々を過ごしていた。 ある日、アパートの前で頻繁に出会っていた男が野崎に声をかけ、バイトを紹介してくれる。その仕事は、男の上司である依頼主を鹿児島まで送る運転手だった。依頼主は25年間にわたる再審請求の末、冤罪事件で勝訴し、マスコミを賑わせた弁護士鳥越弘だった。野崎はバイトを引き受けることに決める。 出発の朝、指定された待ち合わせ場所で野崎と鳥越が出会う。鳥越の希望は高速を使わず、国道1号、2号、3号を乗り継ぎながら…